地絡について [REPORT1−3] 地絡電流の理論
(1)このリポートのテーマ |
(2)充電電流と完全地絡時の零相電流 |
(3)完全地絡時に実際に流れる電流 |
(4)地絡抵抗がある時に実際に流れる電流 |
(5)地絡時の零相電流のまとめ |
- 6kV配電線における1線地絡時の電流として、次図がよく掲載されている。
- ところで、対地静電容量を流れる電流は、零相電流なのか充電電流と零相電流を合わせた実電流なのか、 説明がされていないか、もしくはあいまいなことが多い。また、なぜA相の対地静電容量に電流が流れ ないのか、説明がない。
- 要するに、この図ははなはだあいまいなのであり、正しいとも言えるし、間違っているとも言える のである。このリポートでは、上図の意味を解析することによって、1線地絡時の電流分布の正確な 理解を得ることを主目的とする。
- このリポートにおいては、系統のインピーダンスとして、各相の対地静電容量と地絡抵抗以外は無視する。
- A相完全地絡時には、零相電圧は
Vo=−Ea
この式については、[REPORT1−2]「零相電圧の理論」 を参照してほしい。- 地絡電流すなわち零相電流は、
Ig= Iga+Igb+Igc
零相電流は同相なので、
Iga=Igb=Igc- 充電電流は正常時、地絡時にかかわらず、常に流れる。
各相の充電電流をIa´、Ib´、 Ic´とする。充電電流は常に平衡しているので、
Ia´+Ib´+Ic´=0- 以上のことは、図で表すと直感で、理解できる。
左図は間違っています。Iga、Igb、Igcの方向は正しくは左向きです。
- 上の図から、実際に流れる電流を考える。
- A相 Ia´+Iga=0 Ia´-Iga=0
- B相 Ib´+Igb=Ib Ib´-Igb=Ib
- C相 Ic´+Igc=Ic Ic´-Igc=Ic
- これも図に表すと、直感で理解できる。
左図でIgは左向きが正しい。また右図ではIb、Icは下向きが妥当です。- 右図は「テーマ図」と酷似している。つまり「テーマ図」は、完全地絡時に実際に流れる電流を表し ているのである。完全地絡だから、Rg=0である。従って、「テーマ図」には地絡抵抗Ggを表示しない 方がより正確である。
- この図で特徴的なのは、A相には電流が流れないことである。充電電流と零相電流が打ち消し合う理屈で ある。完全地絡だからA相電位と大地電位が等しいので、電流が流れないのは当然である。
- 地絡抵抗がある(零ではない)場合、零相電圧Voおよび地絡電流Ig は次図のようになる。
右図でIgは反対方向としてください。- 従って、配電系統に実際に流れる電流としては、次のように表示すべきである。
図ではIa、Ib、Icは下向きが妥当です。- 「テーマ図」で地絡抵抗Rgが零でないなら、A相の対地静電容量に実際に流れる電流Ia は零でないので、この図のようにIaを表示しなければならない。
- 以上の検討の結果、「テーマ図」ははなはだあいまいなことがよくわかる。
- 「テーマ図」を見かけたら、表している電流が零相電流なのか、実際に流れる実電流なのか、よく吟味 してかからないと、大きな過ちを犯すことになりかねない。
- 最後に、1線地絡時の零相電流の分布が電験の問題で見受けられるので、次図に示しておく。
- 重要なことは、次の点である。
- 零相電流は、対称座標法の定義から各相とも同相となる。
- 各相に分流する零相電流の大きさは、対地静電容量の大きさが同じなら、各相とも同じ大きさとなる。 すなわち1/3ずつ分流する。
- 零相電流の値は、テブナンの定理から求めることができる。