KIMの電気リポート1

地絡について   [REPORT1−2]  零相電圧の理論

(1)零相電圧の定義
(2)6KV配電系統における1線地絡時の零相電圧
(3)零相電圧の測定
(4)注意事項

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(1)零相電圧の定義
  1. a,b,cを それぞれa相、b相、c相の対地電圧とする。
  2. o,1,2を それぞれ次のように定義する。
           o=(a+b+c)/3 ……零相電圧
           1=(a+aVb+a²Vc)/3 ……正相電圧
           2=(a+a²Vb+aVc)/3 ……逆相電圧
    ここで    はベクトルオペレータである。すなわち、
          1++a²=0
          a³=1
  3. したがって
           a=o+1+2
           b=o+a²V1+aV2
           c=o+aV1+a²V2
  4. 配電系統においてoを下図のようにとる。

  5. a,b,cはそれぞれ
           a=o+a
           b=o+b
           c=o+c
    ここでa,b,cは それぞれa相、b相、c相の起電力とする。
  6. 電源側起電力は常に、a+b+c=0   が成り立つので
           o=(a+b+c)/3
    これは、零相電圧の定義そのものである。すなわち
    『配電線の中性点Nの対地電圧が零相電圧である。』という結論となる。
  7. なお、対称座標法では次の2点を仮定している。
          1.a相起電力が電圧の位相基準である。
          2.相回転はa→b→cの順である。


(2)6KV配電系統における1線地絡時の零相電圧

この項目は、私の「地絡電流を流すのは零相電圧である」という誤った認識に基づいて書かれています。間違いは赤字で訂正しました。ご注意下さい。
  1. 6KV配電系統における1線地絡時の様相は下図のようになる。図において各相の対地静電容量  C と、地絡抵抗 Rg 以外の要素は省略してあるが、 地絡電流 g の計算上は誤差は少ない。

  2. 各相の対地電圧は
           a=a+(g/3)*(1/jωC)           a=a-(g/3)*(1/jωC)
           b=b+(g/3)*(1/jωC)           b=b-(g/3)*(1/jωC)
           c=c+(g/3)*(1/jωC)           c=c-(g/3)*(1/jωC)
  3. 零相電圧の定義より
          o= (a+b+c)/3=(1/j3ωC)*g           o= (a+b+c)/3=-(1/j3ωC)*g
  4. 地絡点から見た系統のインピーダンス  は
            =(1/j3ωC)+Rg=(1+j3ωCRg)/j3ωC
    なおここからは、対称座標法の仮定に従い、a=Eと記す。
    図の電流の向きを考慮してテブナンの定理より
           g =-E/ =-j3ωCE/(1+j3ωC)           g =E/ =j3ωCE/(1+j3ωC)
  5. すなわち
                        g=-E/(Rg+1/j3ωC)           g=E/(Rg+1/j3ωC)
    更にこのgを上式に代入すると
                        o=-E/(1+j3ωCRg)           この式は正解でした。
    この2つの式が1線地絡時の零相電流、零相電圧の結論の式である。
  6. 複素数でわかりずらいが、ベクトル図なら直感で理解できる。

    左図と右図は、全く同等である。重要なことは、gがoよりほぼ90° 進んでいることである。

    この図は間違っているし、ややこしいだけなので削除とします。またこの項の結論は完全に間違っています。正しくは、「重要なことは、完全地絡時に gがoより90°遅れることである。」です。この辺り、地絡理論を理解するうえで大きなポイントです。
  7. またこの2式をスカラーで表すと
    零相電流の大きさ     Ig=E/√{Rg^2+(1/3ωC)^2}
    零相電圧の大きさ     Vo=E/√{1+(3ωCRg)^2}
  8. Rg=∞ のとき。これは正常時であるが、o = 0である。
  9. Rg=0 のとき。これは完全地絡時であるが、o = -Eである。
    従って、1線完全地絡時に発生する零相電圧の大きさは、3810[V]である。
    また、1線完全地絡時の健全相の対地電圧は、正常時の線間電圧と等しく、6600[V]となる。
  10. 上記のことは、ベクトル図で直感的に理解できる。

  11. 更に、不完全地絡時のベクトル図は次のようになる。

    ここで指摘しておきたいことは、oの位相がcの位相とほぼ等しい ことである。この事実は配変における地絡保護継電器の地絡相判別のテクニックとして応用されている。


(3)零相電圧の測定
  1. 零相電圧の理論から、各相の対地電圧の測定が必要であることがわかる。
    しかし、6KV配電系統で簡単に測定できるのは、線間電圧である。従って、何らかの工夫が必要となる。
  2. 配電用変電所においては、GVTを使用する。
  3. 一般需要家においては、GVTの使用は認められていない。通常、ZPDを使用する。


(4)注意事項
  1. 零相電圧の定義式   o=(a+b+c)/3   は、あくまで定義である。現実に系統の中性点電圧が測定されているので、理論と実用が合致し有用なため、 一般に使用されているのである。
  2. 零相電圧について、別の定義の仕方もある。
           o=(a+b+c)/√3
    と定義して、理論を組み立ててもよい。
  3. この場合、1線完全地絡時の零相電圧の大きさは、6600[V]となる。


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