ビル設備管理のお宝データ [REPORT4−4] 熱源機器の効率の巻
(1)初めに |
(2)吸収式冷凍機の効率 |
(3)ボイラーの効率 |
- 私の勤務するビルには令水系が3系統ある。そのうちビル・ホテル系統(以下ビル系統と言う。)で冷凍機の効率が問題になった。ビル系統は蒸気吸収式冷凍機7台と 直焚き吸収式冷凍機3台の構成である。直焚きの方が蒸気を介さない分効率的には良いはずだ、ということで今年の夏は直焚き式を多用したのであるが、本当にそうなのかを 検証してみた。
- 7月のデータである。データは運転が安定している12〜18時のものである。1日ごとに蒸気式と直焚き式のそれぞれについて、運転率と原価を計算しプロットしてみた。 また両者の全体を総合効率として同じくプロットした。
- 効率は1[GJ]の熱量を発生するのに必要な経費を計算した。経費としては、ガス代・電気代でボイラーで発生する蒸気も結局ガス代・電気代に集約される。当ビルでは コージェネに排ガスボイラーが付属しているが、コージェネ発生蒸気の原価は貫流ボイラー相当の2500[円/t]で計算した。冷却塔で蒸発する冷却補給水は時間ごとの データが取得できなかったので無視した。
- 運転率は定格の発生熱量に対する運転時の発生熱量の比である。
- 赤丸印は、直焚きを試験的に1時間ほど運転しただけで、ほとんど蒸気式が寄与した運転日であった。運転率は高くないが、効率は良くなっている。黒丸印は最も効率的な 運転をした日であるが、冷水平均温度が7.8℃と盛夏時としてはぎりぎりであったことを付け加えておく。
- 大略において常識で予想した傾向を示している。蒸気式・直焚き式ともに運転率が高いほど効率は良くなっているが、総合運転率65%以上では大きな差はない。また 運転率が65%を下回るとさすがに効率が悪くなっている。このことから総合運転率が65%以上を目指せば大過ない運転が実現できる、と結論できそうである。
- 蒸気式の運転率が常に直焚き式を上回っている。原因として次のような要因が考えられるが、この図だけでは特定できない。少なくとも両方式の性能差でなないと思われる。
- 各冷凍機の温度設定などのソフトウェア的差異
- 配管長や設置階などの外部要因
- 流量計や温度計の過誤
- 冷水流量・冷却水量などの定格値からの乖離
- 冷凍機内部要因
- 直焚き式だけでは必要熱量をまかないきれないので蒸気式との平行運転にならざるを得ない。すなわちシステムとして運転せざるを得ないのであるが、現実に蒸気式の方が 運転率が高く効率も良い事実は、効率的な運転を目差す上で重要である。結論として効率的な運転を目差すなら、現状では蒸気式を主に運転し直焚きは補助的に考える他はない。
- 当ビルには5tの炉筒煙管ボイラー3台と3.4tの貫流ボイラーがある。他にコージェネ付属の3.5t排煙ボイラーがあるが、ここでは分析の対象とはしない。
- ボイラーについても、定格に近い運転をすればするほど効率即ち燃費が良くなるという常識がある。ここでは蒸気1tを発生させるのに必要なガス流量とその時の運転率を 3日間で時間ごとにプロットしてみた。
- 炉筒煙管ボイラーの例である。運転率20%以下では効率が悪くなっているが、40%以上では運転率による効率の差異は認められない。
- 貫流ボイラーの例である。こちらは運転率10%以上では効率の差異はほとんどないことがわかる。
- 低運転率領域での効率の差異から、貫流ボイラーの設定圧力を炉筒煙管ボイラーより高くして、軽負荷時に貫流ボイラーだけで制御して炉筒煙管ボイラーを運転させない ように運転するのが最も効率的と思われる。
- 炉筒煙管ボイラーでは、燃焼の炎が赤っぽくて発生蒸気量が1tに満たないような運転を避けることが効率運転上大切で、蒸気量が1t以上の場合は運転率にこだわる 必要はないことがわかる。