KIMの電気リポート4

ビル設備管理のお宝データ   [REPORT4−2]  空調機の巻

(1)初めに
(2)メインフィルター目詰まりによる電流の変化
(3)VAV開度による電流の変化
(4)ベルト滑りによる電流の変化
(5)電流値変化の理論的根拠

KIMの電気リポート4[目次]に戻る
TOPに[戻る]
サイドフレームを[消去する]



(1)初めに
  1. 私は現在、大阪駅前のとある高層ビルに、設備係員の機械担当として勤務している。設備要員は運転、保全、工事に大きく分類されるが、私は運転要員である。 主な業務は中央監視業務、日常点検業務、そして障害の一次切分けおよび仮処置である。
  2.  このリポートでは、空調機の日常点検で測定する電流計のデータを分析し、日常何気なく読んでいる電流値が重要な意味を持つものであることを認識することの 大切さを強調したい。
(2)メインフィルター目詰まりによる電流の変化
  1. 送風機のフィルター目詰まりは、吸込弁を絞ったのと同じ効果が現れる。次図では実に30〜18[A]の間で電流値が変化しているのがよくわかる。


  2. フィルターの日常点検では差圧を確認するが、この空調機の場合、メインフィルターが新品のときは15[mmAq]程度であるが、交換直前では30[mmAq]と ほぼフィルター交換の目安である2倍を示していた。
  3. プレフィルターを手動送りした時も、電流値に明白な変化が認められる。
  4. 「設備と管理」2002年11月号63頁に、「空調機の電流による管理」(西山隆)という記事がある。実はこの記事を見て、当ビルの場合どうなのかな、と調べてみたのが 上図である。
(3)VAV開度による電流の変化
  1. VAVの開閉を操作すると、吐出し弁を絞るのと同じ効果が現れる。AC−115系統は2箇所のVAVがある。従って開閉により3段階に電流値が変化する。


  2. VAVを自動で運転する時は、設定温度と室内温度の差で開度を調整するので、1[A]程度のばらつきがある。全閉の場合はほぼ7[A]と一定である。
  3. この空調機では電流値が小さいためか、フィルターの汚れの影響は認められない。
(4)ベルト滑りによる電流の変化
  1. 空調機の送風機駆動ベルトが伸びて滑るようになった時に、電流値がどのように変化するのか大変興味のあるところである。


  2. AC−109系統は5台のVAVがある。その開度により風量が変化するので、電流値も5[A]程度のばらつきが認められる。
  3. フィルター取替えの前後で10〜12[A]程度の電流値変化があるが、この値は上記(2)の値とほぼ同じである。
  4. ベルト滑りの時の電流値は、フィルター目詰まりの最低値より更に低い値となっている。またフィルター取替えの前後で交換の影響はほとんど認められない。
  5. AC−109系統は廊下の給気をCAV制御しているため、(2)のAC−115系統のような全閉状態は発生しない。
  6. 上記の西山さんも指摘されているが、最大値の60%以下に電流値が下がる場合は、ベルト滑りが発生している、としていいようである。
(5)電流値変化の理論的根拠
  1. 電動機のトルク、電流特性および負荷のトルク特性は次図のようになる。


  2. 通常の運転点は図のA点である。フィルターの目詰まりがなく、VAVも全開の時の状態である。
  3. フィルターが目詰まりを起こしたり、VAVが一部閉じた時の負荷トルクは図のB’点となり、それに対応する電流値はB”点となる。
  4. 送風機の負荷トルクは、低速の範囲で軸受部の摩擦トルクが大きく現れるため、単純に回転数の2乗には比例せず、図のように極小値を持つカーブとなる。
    ベルト滑りの時は図のC’点が負荷トルクとなる。ベルトが少し引っかかりC’点より加速すると、負荷が大きくなりベルトが滑り元のC’点に戻る。 逆にC’点より減速すると、やはり負荷が大きくなってベルトが引っかかりやすくなり元のC’点に戻る。つまりベルトが滑った状態では、負荷が最も小さい点で運転する ことになる。
    C’点に対応する電流値はC”点となる。


KIMの電気リポート4[目次]に戻る
TOPに[戻る]
ご意見、ご感想、ご質問は [掲示板] または[メール]でお願いします。
>